料理長(シェフ)の採用に迷ったら

行列のできる飲食店経営者になりたかった。自分が考えたメニューなら絶対に売れると思った。いつも笑顔が溢れるお店になるはずだった。でもお客さんが来ない。売上が上がらない。クレーム対応に疲れてしまった。そんなあなたに寄り添うサイトです。

メニュー開発の考え方。食材、おいしさとの出会いを演出する

飲食店のメニューはどのように考えていけばいいでしょうか。

メニュー数が多すぎるのは失敗しがち

メニュー数が多いといろいろなリスクが発生します。まずは食材廃棄リスクです。多くのメニューに対応しないとけないため、用意しておく食材も多く必要です。常に全てのメニューに注文が入るとは限りません。かといってメニュー表に書いたからには注文が来たら対応しなくてはいけません。そうなると食材廃棄率が多くなり、利益率も悪くなってしまいます。

また、料理人のスキルも必要になってきます。様々な料理を作れなくてはなりませんので、幅広い技術、経験を持った料理人、シェフでないと対応できなくなります。これは人件費の高騰やシフトを組みづらくなったりすることにつながります。あのシェフがいないと提供できない料理というものがあってはいけないからです。

メニューの絞り方

大手チェーンのように体力がない限り、メニューは絞っていくことが必要になってきます。ではどれくらいまで絞るのがいいのでしょうか。究極系は1品しか提供しないというパターンです。非現実的に思えるかもしれませんが、実際にそういったお店もあります。見た目は数種類のメニューがあるように思えても実際には同じものを作り、トッピングを変えているだけ、というパターンもあるでしょう。

ただ、1品だけというのは料理人、シェフとしても面白くないという意見もあるかもしれません。せっかく学んだ技術をいかんなく発揮して、おいしい料理を作り、それをおいしく食べてもらった人の笑顔を見たい。料理人を目指す人が持つ思いでもあるでしょう。またお客さんとしても飽きてしまうということだってあるでしょう。ここら辺にヒントがありそうな気がします。

他業界に学ぶメニュー開発

参考になる例が書店業界にあったのでご紹介します。その書店は街の小さな書店でした。親の代から書店をやっていたため、息子は少しだけサラリーマンをやった後に何の疑問もなく家業を継いだのです。しかし、ネット通販や大規模百貨店が近くにでき始め、だんだんと商売が厳しくなってきます。単純に本を売っていれば儲かっていた時代とは変わってきたということです。

そこでその店主が始めたのが、棚にストーリー性、つながりをもうけることでした。ある一つの本に興味を持ち、その本を手に取ると、次に読むべき本がわかったり、時には店主自ら解説をするなどしたのです。

通常本屋の棚と言えばジャンルごとだったり作家ごとに並んでいることが多いですよね。自分が探している本がどこにあるかわかることが一番重要だったりします。一方でこの店主が重要視したのが、自分がみつけようとしていない本との出会いが見つかる棚だったのです。

顧客は本屋に本そのものを求めてくるように見えますが、本質的には知識や知識を得ることを通じて得られる自分自身の成長が欲しいわけです。知的好奇心が刺激される、自分では言語化できなかった欲しい情報、次に読みたい本、知識の情報が得られる。そういったことをこの店主は演出しようとしたわけです。

この本屋の店主は自店舗の棚の演出にとどまらず、他の場所における演出・コーディネイトも手がけるようになりました。ホテル、旅館、病院などその場その場に適した本、知識というものがあるはずですが、どうしても週刊誌やオーナーの趣味のマンガになってしまいがちです。また新しい本が入ってくるといったこともあまりないのが実情でしょう。そこをこの店主がコーディネイトし、さらには定期的に新しい本の提案をしてあげているのです。

食材、おいしさとの出会いを演出するという発想

同じようなことが飲食店ではどのように考えられるでしょうか。メニュー表にストーリー性を持たせることはできないでしょうか。これは別にメニューが浦島太郎や桃太郎のようなメニューになっている必要があるということではありません。

ある一つのメニューをお客さんが選んだ際に、そこに使われている食材がどういうものであり、他のメニューとのつながり、味付けの理由、合わせるべきドリンクなどが次々とつながって出てくる。そんなメニュー表があったらどうでしょうか。もちろん店員さんが説明してあげる形でもいいでしょう。

お客さんは最初に興味を持ったメニューだけではなく、自分が知らなかった知識を得た上で興味を持ったメニューを頼むかもしれません。食べている時のおいしさも知識が満たされた上の方がおいしく感じられ、いつもより注文量が増えるかも知れません。何より食べることを通じた楽しさが全く違います。

本屋が知識との出会いであれば、飲食店は食材、おいしさとの出会いです。同じメニューであってもそのメニューが持つ意味や食材とのつながり、他のメニューとの関連性などがわかると食事の楽しさも飛躍的に高まっていくのではないでしょうか。